新型コロナ禍によって実施延期となっておりました高校入学式を挙行しました。
昨日までの梅雨空から、今日は梅雨の中休みの晴れ間が覗く中で、二ヶ月遅れで高校入学式を挙行しました。
以下式辞です。
「新入生の皆さん。
今、君たちは、青春のまっただ中、所謂、思春期という時期に位地しています。この思春期という時期は、自分を生み出す時期でもあります。自分を生み出す時期とは、人生の中で最大の難事業に挑もうとしている時期といえます。
小学校の時を思い出して下さい。先生の問いかけに対し、授業中、うるさいくらい、「ハイハイハイ」とやたら手を挙げていた人はいませんでしたか。でも、いつのまにか、にわかに手を挙げなくなった。それはどうしてでしょう。
消極的になったわけでも、勉強が解らなくなったわけでもありません。それは、自分を見詰めるもう一人の自分が、自分の中に産まれてきたもので、何かしようとすると、「待てよっ」と自分をみてしまう。手を挙げようとすると、「待てよ」
男子であれば、「俺はガキのように見られはしないか」…。
それは自分を見詰める目が成長してきたからなのです。この時期は、やたらと鏡を見るのが好きになるのです。
一方、かなり荒れている学校であったとしても、窓ガラスは割られても、トイレの鏡が壊されることはまずありません。何故だかわかりますか。それは、最大の必需品だからです。鏡を見て、鏡の中の自分と対話をし、前髪を上げたり、垂らしてみたり、格好がいいかなど、一生懸命、鏡と対話をしている姿は、まさに自分との対話、自分の発見、自分との探究といえるのです。
ただ、自己の探究、自分の発見は、自分のことだけを懸命に考えていたのでは、自分自身を掴むことはできません。自己発見というのは、自分は何のために産まれてきたのか。どういう使命があって何をすべきなのかを考えることです
ところで、スティーブ・ジョブズという人の名前を聞いたことはありますか。iphoneで有名なアップルの創業者で、日本が好きで、仏教の禅にも精通した人です。そのスティーブ・ジョブズ氏は、十五年前の6月、母校であるアメリカスタンフォード大学で、学生に対し、こう激励しました「ハングリーであれ」と。また、オバマ前アメリカ大統領も学生に対し、「これまでのやり方はこうだったと説教する人はもういない。これからの世界は君たちが作る」と述べています。
新型コロナによって、壊された日常は完全に元に戻ることは恐らくありません。
よりよいものに進化させることができるのは君たちです。新しく築くことができるのも君たちです。
過去パンデミックが起こった時、社会は大きく変わっています。感染症のウイルスは、身体に忍び込みますが、同時に心に忍び込もうとするウイルスがいます。困難に耐え、努力する心を蝕むウイルスです。心の免疫力も高めて下さい。その何よりの特効薬は、良き言葉、良き教えに触れること、そして、切磋琢磨する良き友に出会うことです。
社会が大きく変わろうとする中、自己発見・自己の使命とは何かを、つきつめ考えて下さい。そして、思春期・青春期を、価値があり、意義ある、ものにして下さい。
以上、第73回関西大倉高等学校入学式式辞とさせていただきます。