12月1日に行われた学校長の人権講話の内容を以下掲載します
12月4日から10日までは人権週間に因んで人権講話を行います。
「ブラック」企業ということばを聞いたことがありますか。以前は、暴力団の関連企業をさすことばだったのですが、今は、「若い人たちを酷使する企業」として使われるようになっています。問題がある企業を告発する運動にもつながりました。
このブラックということばは、どちらかというと日本語にも「黒星」ということばがあるように、あまり良い意味で使われてはいないようで、人種差別の観点から否定的につかうべきではないという議論もでてきています。今日は、人権講話ということですので、Blackから話したいと思います。
BLM運動とうことばを聞いたことはありますか。
Black lives matter.アルファベット1文字のBとLとMをそれぞれとっています。
黒人の命は大切だ。或いは、黒人の命も大切だ。と訳せるでしょうか。
テニスの大坂なおみ選手は、9月の全米オープンテニスで毎試合、黒人差別反対を訴え、殺害された黒人の方の名前入りの黒いマスク姿で出場しました。大坂選手は、お父さんがハイチ出身の黒人の方、お母さんが日本人で大阪の方です。
全米オープンテニスの優勝インタビューに際し、「どうして、黒いマスクを着用したのですか」という問いかけに対し、大坂選手は「あなたは、どんなメッセージを受け取りましたか」と問い返しています。その問いかけは、私たち日本人にも向けられていることを知ってほしいと思います。大坂選手は「全てのひとが議論をするきっかけを作りたかった」とも言っています。
海の向こうのアメリカ社会で感じる命に関わる生きづらさを、BLM運動は告発しています。その始まりは約400年前、海の向こうから奴隷として無理矢理連れてこられた強制にあります。リンカーンの奴隷解放宣言が出され、その後、公民権が与えられても、BLM運動の抗議デモでの「400年続いている」という叫びが、その歴史を物語っています。
この運動は、イギリスにも波及し、植民地主義者の銅像が倒されたり、破壊されました。写している写真にあるように、イギリス首相のチャーチルの銅像にも落書きがされました。
BLM運動は、アメリカの歴史にとどまらず、世界中の支配し、支配された側の歴史に対する問いかけでもあるのです。
1863年のリンカーン大統領による奴隷解放宣言ののち、アメリカでの奴隷制度は無くなりました。しかし、日常生活の様々な場面で民主国家といえない現実が続いていました。それから丁度100年後の1963年、のちに「I have a Dream.」と題した有名な演説を行い、人種差別の撤廃とあらゆる人種の協和という理想を人々に訴えたキング牧師らによる公民権運動を経て、今のアメリカがあるのです。公民権とはおおやけの民権と書きます。それは、黒人にも憲法で保障された権利を平等に与えるべきだという運動です。高校生の皆さんは高一の現代社会の授業で学習したと思います。
「人は生まれながらにして平等である」。という基本的人権の理念をもう一度胸に刻んで欲しいと思います。
最後に、キング牧師が行った「I have a Dream.」の演説を放送部員に朗読して貰い、人権講話を終わりたいと思います。