新型コロナに世界も日本も、君たちも翻弄された1年が終わり、新しい年が始まりました。
この未曾有の危機を少しでも早く終息させ実り多い年として築いていく、その役割を担うのは君たち、生徒の皆さんです。決して、国やリーダーばかりではありません。
生徒の皆さんの一人ひとりの生き方や、君たちが日々どのように過ごしてきたかの集積が将来を決めることになります。
さて、今年は、丑年。十二支の中で、丑年は2番目の干支です。
十二支は、紀元前の中国、殷と呼ばれる王朝の時代に、方角や暦を表すのに用いられてきた12の漢字を指しますが、当時の人々は、必ずしも文字が正確に読めるわけではなかったので、それぞれの字に、12の動物を当てはめることになったともいわれています。十二支の考えは、中国から周辺の地域に広まるにつれ、チベットやタイでは卯(うさぎ)の代わりにネコが入っていたり、モンゴルでは虎ではなくヒョウが入っていたり、地域によってバリエーションがあります。
みなさんは、十二支にまつわる物語を聞かれたことはありますか?
昔々神様が、元旦に挨拶にきた動物たちを、一番最初に到着したものから
十二番目までを順に、一年のリーダーに決めよう、と動物たちに競わせました。
歩みがのんびりしている牛は1番になるために誰よりも早く、前の晩に出発します。ところが牛の背中に乗っていたねずみが、神様の御殿の門が開いたとたんに飛び降りたためねずみが1番に。牛は2番となり、干支の順番は2番目になったという話があります。
この話からも分かるように、当時から牛は、のんびり、真面目なイメージがあったのかもしれません。
日本では昔から牛車や牛耕など、人や荷物を運ぶための労働力として、生活に欠かせない大切な動物でした。
勤勉によく働くその姿が、「誠実さ」を象徴し、縁起の良い動物として十二支に加えられたとも言われています。そんなことから、丑年の人はマイペース・忍耐強い……と言われることもあるようです。
また、丑年は、先を急がず一歩一歩着実に物事を進める年とも言われています。
牛は、昔から牛耕と言われるように、大変な農作業をしっかり手伝ってくれる働きぶりから、丑年は「耐える」、「これから発展する前触れ・芽が出る」というような年になるとも言われています。結果を求める時期ではなく、結果につながる道をコツコツと積み上げていく時期とされているようです。
丑の年は、黙々と目の前の事を一つひとつ着実に進めていくことが将来につながると考えてよいのかもしれません。
さて、人間、どんなことが起こっても、それに対応できる適応力を、不断から養う必要があります。
また、苦しい時こそ、自分を成長させる一番の先生でもあります。
生活リズムを整える。きちんと食事を摂り、体力をつける。手を洗う。マスクをするというあたり前のことを、当たり前にきちんとすることが大切です。「ピンチはチャンス」と言いますが、苦難の中にあっても、大きなプラスになる芽が必ずあります。
それが次の発展に繋がることになります。
人は自分の身を守る本能を持っていますから、どうしても悪いこと、危険なこと、不安なこと、嫌なことに焦点をあててしまい、避けて通ってしまいがちです。しかし、見方を変えれば、マイナスと思える出来事の中にも、素晴らしいものが隠れていることに気づくこともあります。
また、不快な思いを与える人であっても、その人が自分の至らなさに気づかせてくれる人かもしれません。自分を鍛え、成長させてくれる人と捉えることができれば、その出会いは大きな恵みとなります。苦手な相手に感謝できるようになれば、人間関係は円滑になります。
昨年の終業式では、一流人たる人がどんな人であるかを話しました。
以前、「一」を大切にして欲しいと話したこともあります。一流もしかりです。一日、一時間、先を急がず一歩一歩着実に物事を進める年とし、良き一年にするため、一流人になるべく、新たな一歩を踏み出してください。
これから受験を迎える高三生の皆さん、第一志望大学合格をめざし、頑張ってください。
生徒の皆さん全てに伝えておきますが、大学へ入ることが目標ではありません。高い志を持ち、君たち自身がどう社会に貢献していくかが大切です。大学はあくまで手段です。自分が社会で貢献すること。「自献(じけん)」の精神を念頭に入れておく必要があります。「自献」とは自分の自に、貢献の献、献は南を書いて犬と書きます。目標は遙か先にあることを忘れないでください。また、高二生のみなさんも、一年後の受験にむけ、スタートしましょう。
最後に、新型コロナウイルス感染症との闘いは、100年前のスペイン風邪が終息するのに、3年かかったように、長期戦に入りました。しかも、誰もが感染する可能性があります。感染した人が悪いというわけではありません。身近に感染した人や症状のある人がいたとしても、そうした人を責めるのではなく、感染症から自分を守る行動を心がけて下さい。
体調がおかしいときは外に出ない。人に会わない。検温を行い、体調を把握する。外出は必要最低限にとどめる。
大切なのは、マスク・手洗い・換気など徹底し、「接触」はあっても「濃厚接触」はしないという状態をつくることです。
濃厚接触者の定義は、「換気の十分でない環境で、感染者とマスク無しで15分以上会話をした人」です。学校で感染者が出ても、この条件に当てはまらない人は濃厚接触者にはなりません。100%ムリだとしても、「接触」はあっても「濃厚接触」はないという状態を常に心がけるようにすれば、学校を舞台にした大きなクラスター、集団感染はおきづらく学校を閉鎖しなければならないような事態は避けることができます。聞くところによると、昨年だけで4回も休校になった学校もあります。こまめにアルコールで手洗いすること。普段からマスクを着用すること。
三密、いわゆる、複数の人が集まる換気の悪い密閉された空間、多くの人が密集している場所、お互いに手を伸ばしたら届く距離での会話やカラオケなど同じ行為が行われる場所は避けること。
自分で自分の身を守ることの徹底をお願いします。
以上で始業式の話を終わります。