昨日の大雨も止み、13日㈯ 10時より本校体育館におきまして第25回中学校卒業式を挙行しました。
【中学校卒業式式辞】
義務教育を終えられ、4月から高等学校に進む皆さんに尋ねたいことがあります。
「君たちは、何故、高校に進学し、勉強するのですか」
誰でも、当たり前のように、幼稚園や保育園に行き、そして小学校に行き勉強してきました。
勉強が得意で、いつも成績が良い子がいる反面、勉強がどうしてもキライで、成績もあまり良くない人もいます。
ことあろう、私はどちらかというと後者、成績はあまり良いとはいえない方でした。
では、何のために高等学校に進学し、何のために大学に進学するのでしょう。何のために勉強するのか。どうして勉強しなくちゃいけないのでしょう。
エライ人になるため? それともお金持ちになるため?
一体、何のためでしょう?
後、10年も経てば、君たちは社会に出て働くことになります。
その中で、進んで人から喜ばれる行動を起こす人になるためです。
何をするにつけても、スピード感が求められる今の時代、要領よく物事をこなす人が、もてはやされているように見えます。しかし、一時的な評価にとらわれず、自分の持てる力を精一杯発揮し、社会に尽くす尊さを知ることも大切です。
精魂込めて作ったものが、簡単にできたものと、見た目ではほとんど変わらないとしたら、費やした労力を損したように思うかもしれませんが、本当にそうでしょうか。
力を出しきってカラになれば、そこには吸収する力が生まれ、新たな力が自ずと湧いてきます。自分の力、持てる力を出し惜しみしていては、さらなる成長は望めません。自分の可能性にチャレンジしてみて下さい。
要領よく、うわべを取り繕うのはメッキのようなもので、やがて剥げ落ちてしまいます。それに対して、手間、暇かかった本物は、磨けば磨くほど艶が出て光りが増すものです。
では、今、光り磨くものとは何でしょうか。
それは君たち自身です。自分磨きをするため、高い志を持ち、次なるステップに進むため、自分を高める努力をして下さい。
「勉強をすることが君たちの仕事って言われたこと、聞かれたことはありますか」
では、仕事をしている大人の人たちは、勉強しなくていいのかと言うと、そうではありません。実際はかなり勉強しないとやってはいけません。学生の時より勉強しているという社会人の方も、少なくありません。
例えば、報告書の書き方、まとめ方、プレゼンテーション力や知識、お医者さんにいたっては、医療技術や薬は日々進歩していますから勉強しないとやってはいけません。学生の時に学んだ事だけで、そのまま仕事ができるということは、ほぼありません。
『講孟劄記(こうもうさっき)』という孟子の教えを伝えるためにまとめた吉田松陰の本の中に、「凡そ学をなすの要は己が為にするあり。己が為にするは君子の学なり。人の為にするは小人の学なり」という言葉があります。
何のために学ぶのかといえば、自分を磨くため、自分のためにする学びこそが、善い人間を志す人の学びである。人に褒められる為に学ぶことは、とるに足らない人の学びであると言われているのです。
テストで、いい点をとって褒められるためとか、仕事でよい成績を出して出世するためとか、そんなことは、自分を磨くことに比べたら小さな事だということです。
この「自分を磨くため」という答えは、もはや、「何のために勉強するか?」ということを超え、「何のために生きていくのか」の答えにもなっています。
生きていくこと=学ぶこと、そう言っても良いのかもしれません。
自分を磨くため、自分を高めることとは、学ぶこと、それは、生きていくこと、すなわちこの後、どのように社会に貢献していくかです。そのための基本となる力を高等学校や大学で身につけるのです。
結果が出るまでには、もう少し時間がかかるかもしれません。
その間の努力は決して無駄にはなりません。
中学校を卒業し、高等学校へステップがひとつあがります。
ひとつ前へ、一つ上へ…。
改めて、関西大倉中学校を卒業される106名の皆さん、中学卒業おめでとう。
以上、第25回関西大倉中学校卒業式式辞とさせていただきます。
2021年(令和3)年3月13日
関西大倉中学校 学校長 古 川 英 明