2021年度8月22日(日) 京都市動物園
コロナ禍での教育活動自粛の影響を受け、長らく活動を制限されていた京都大学との高大連携講座である「野生動物学初歩実習」ですが、ジュニアアドバイザーの皆さんにご尽力いただき、夏期休暇が始まって以降、感染予防対策をしながら少しずつ活動を再開しています。実は自粛下においても、オンラインでの活動を通して実習は進行しており、各生徒が研究テーマを設定できるよう、ご指導いただきました。そのおかげで、先週までに各生徒の研究テーマの設定及び実験計画はほぼ完成しているようです。中には、動物園で飼育されている動物に直接アプローチするといった非常に高度な研究計画もあり、「高校生メインの研究で、このレベルの研究が実現できるなんて思いもよらなかった」と私自身驚きを隠せませんでした。
さて、そんな実習ですが、今回からは先に述べた実験計画に基づき、各生徒個人が自由に個人研究データを収集するスタイルをとっていくことになります。
今回私が合流したのは、チンパンジーの観察をベースにした研究グループです。(もう一つのグループはゾウの観察でした。)偶然ですが、実習がスタートする前にチンパンジーの厩舎を除くと、ちょうど学習課題実験をしている様子を見ることができました。
チンパンジーは、画面にランダムに表示された数字を1から12の昇順に押していき、すべて押すことができれば餌をもらうことができるという課題に取り組んでいました。
見学をしていると、地元の中学生に「研究者の方ですか」と本校生が声をかけられました。その中学生は、昨年度京都市動物園のイベントで霊長類研究について京都大学の学生から研究の方法をレクチャーしてもらったそうです。今年度の自由研究にタイムサンプリングを用いたチンパンジーの観察を設定したため、来園して観察していたようです。少し研究内容を尋ねてみると、非常に面白い着眼点で上手くいけば良い研究になるなあという感想を持ちました。(その中学生は、後ジュニアアドバイザーの方にも自分の研究について質問していました。初対面の人にでも積極的に質問して研究の精度を高めようという姿勢にびっくりしました。)「京都大学に入学して、霊長類の研究をしたいと思っています」と発言する中学生に対して、本校生徒も「自分も京大に行くつもりです」としっかり返してくれました。同じチンパンジーを研究している者同士、話が弾んでいたように思います。
今回も天気が悪く、外での観察ができないのではないかと危ぶまれましたが、すこし遅れて外での観察ができるようになりました。チンパンジーのロジャーは時間が来ても開かない扉に悪態をつき、バンバン叩き、ドシドシ蹴り。お母さんに文句を言うかのような仕草をみせていた姿が可愛かったです。
来園者もまばらで、観察はし易かったように思います。生徒が設定している指標が多いため、右に左に行ったり来たり。ある時はベンチに座り続け、ある時はガラスの前に立ち続け。トータル5時間近くのデータサンプリングをよくがんばったと思います。
時折観察の合間にはジュニアアドバイザーからアドバイスが入ります。より精度の高いデータを収集できるといいですね。プリマーテス研究会での発表が本当に楽しみです。
実は、先週の大雨で実習が一回無くなってしまい。今回も雨で途中解散となってしまいました。また、コロナ禍での先行き不透明な中、研究場所や時間の確保の問題や学会が開催されるのかといったネガティブな情報もあります。そんな中でも生徒達には、「なぜこの活動に参加しようと思ったのか」、「この活動で何を成し遂げたいと思ったのか」といった初心を忘れずに全力で研究を進めて欲しいと思っています。
コロナ禍の中、生徒たちが研究活動を進められるよう、様々にご尽力いただき実習環境を整えてくださいました京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院野生動物学初歩実習関係者の皆様、誠に有り難う御座います。今後もよろしくお願い申し上げます。