「野生動物学初歩実習」活動報告⑤

2021/10/08

コロナ禍における緊急事態宣言の中、京都市動物園は9月末まで休園となっていました。個人研究の方針が決まり、「さあデータ収集を!」と思った矢先での休園だったので、生徒たちは戸惑いを隠せませんでした。しかしながら、京都市動物園の皆様やジュニアアドバイザーの皆様にご尽力いただいたおかげで、閉園中でも研究には支障が出ないように進めることができました。
自粛明け最初の休日だった10/3(日)の動物園は非常に多くの人で賑わっていました。私たちだけでなく、動物達もどこかそわそわしているように見受けられたのは気のせいではなかったはず。開園後、チンパンジーが外に出る前に一般公開されている、チンパンジーの学習実験コーナーには人だかりができており、「はやっ!」や「すごっ!」といったような声が飛び交っていました。「せやんなぁ」と思いながら、私も久しぶりの実験風景をながめていましたが、そうしていると、動物園が再開されたのだと、そしてまた研究が進められるようになったのだと、改めて実感することができました。

 
 
 そういえば、今日のチンパンジーの観察では、個人的に非常に驚いたことがありました。突然、「ガシャァァァァン!」という音が鳴り響き、チンパンジーの鳴き声とドタドタという音が聞こえてきました。チンパンジーたちの喧嘩です。これまで観察していた時間に見ることはなかったので、想像もしていなかった喧嘩の激しさに衝撃を受けました。

少し分かりにくいですが、ロジャーがお母さんにしがみついています。(真ん中右です。)喧嘩が怖かったのでしょうか。ぎゅっとしがみついて離れようとしない姿は、人間の親子のようで微笑ましかったです。(ちなみに、喧嘩の原因はわかりませんでした。)

 ゾウの観察グループでは、いつもの観察に加えて、今回は食事中の観察にも取り組んでいました。ターゲット行動が食事前~食事中でどのように見られるのかを観察・記録します。ゾウの食事は長いですし、いつもと違った距離での観察になるので大変そうでした。
観察結果を受けて、休憩時間にアドバイザーの方と行動の仮説を立ててみましたが、これがなかなかに難しい。人間と同じように「心情」というものを設定してよいのか、飼育員さんとの「関係性」を考えて良いのか、これは血液検査やホルモンについての調査が必要だ、などと議論白熱。私個人的としては非常に楽しく議論ができました。新しい仮説を立てることができる有意義な研究になりそうだと、手応えを感じました。

昼休憩中は「密を避けて食事をとってください」とのことでしたが、あまりの人の多さゆえに、このような食事風景に…。日中最高気温30度という夏日でしたが、間隔をあけ「日向」で食事をとる生徒たち。「熱中症には気を付けて」と声をかけましたが、声をかけたところで日陰が増えるわけでもなく…。無事最後まで元気に観察できていたので、「高校生の体力ってすごいなあ」と、こちらはただただ感心するばかりでした。

さて、最後にツキノワグマの観察です。実は、ツキノワグマの観察は、「嗅覚」に関する《実験》をして、その様子を観察するという計画が進められています。京都市動物園様のご厚意により、「複数のにおいに対して、ツキノワグマがどのような反応を見せるのか」という実験をさせていただけることになったのです。動物の檻の中に、特定のにおいを付けたホースを設置し、その反応を観察・記録していきます。もちろん檻の中への設置については職員の方にご協力いただきますが、「どのようなにおいにするか」という刺激の設定に関しては、本校の生徒が仮説に基づき設定したものを使います。(一枚目が普段の檻の中です。二枚目の写真が実験中の檻の様子です。右のロープの真ん中辺りに白いホースが付けられているとわかるでしょうか。このホースに特定のにおいをつけており、ツキノワグマがどのような反応をするのかを観察します。コントロールのために、随分前から準備をしていただきました。)観察場所に向かうと、実験に取り組んでいる生徒から「前回慣れさせるために、においのないホースを入れていた時には、それほど反応は見られませんでした。ところが、今回入れたにおいをつけたホースに対しては、前回には見られなかった顕著な反応が確認できました!」と報告を受けました。

 
 
まさか、高校生の研究でここまでの実験ができるとは想像もしておらず、生徒よりも私自身が受けた衝撃の方が強かったように思います。(仮に動物実験系心理学を専攻する大学生だったとして、卒業論文研究でここまでの研究をさせてもらえるか?と思った次第です。)しかも先に述べたように、今回の実験で、以前何もにおいを付けていない条件で観察したときとは異なる反応を見ることができたと報告を受け、今後の研究の展開が非常に楽しみになってきました。有意義な研究になるのではないでしょうか。

実習の最後には、ジュニアアドバイザーから、今後のデータ分析に必要になるExcel関数機能を教えてもらいます。ある生徒が「学校の情報の授業で沢山演習をしました。なのでバッチリです。」と言っていただけあり、生徒たち全員の理解もスムーズだったように思います。また、普段はそれほど使わない関数が、今回収集したデータの分析には非常に有用だとわかり、別の生徒は「こんなことができるんだ」と驚いていました。

 
 

京都市動物園の皆様には、直接動物にアプローチをかけるという特別な研究をご快諾いただき、またご尽力賜りましたこと深く感謝申し上げます。また、ジュニアアドバイザーの皆さんを始めとした京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院野生動物学初歩実習関係者の皆様、大変な中で活動を進めていただき、誠に有り難う御座います。生徒たちはこれを当たり前と思わず、自分の取り組みをこれだけの方々が応援してくださっていることに感謝しながら、全力で研究を楽しんでもらいたいと思います。